いちおう上司でもあるSさんには逆らえず結局連れて行かれたのですが、着いたのはちょっと高級なカラオケスナックラウンジといった店で、Sさんは馴染みのようでした。オカマのママさんとSさんが談笑しているあいだ、僕はヒマをもてあまして店内を見回していたのですが、ふとひとりの白い和服姿の女性に視線がひきつけられました。年齢は28歳くらいで170〓ちかいすらりとした長身。はじめは後姿しか見えなかったのですが着物のうえからでもその脚線美とプロポーションのよさは想像がつきました。しばらくしてちらと横顔が見えたのですが、韓国系の目元がきりりとした若い頃の杉本彩を思わせるセクシーな美人で、思わず身を乗り出して見てしまうほどでした。客の男と談笑している感じから察すると、どうもその女性も店の常連客のように見えました。アップに結わえた艶やかな髪と、うなじの美しさにしばらく見とれていたのですが、気がつくとその女性が僕のほうをちらっと見返したのがわかり、あわてて視線をそらして煙草に火をつけました。
その後しばらく酔っ払ったSさんとママさんのくだらない話に相槌をうっていましたが、
『Sさん久しぶりじゃない。』
という艶やかな声に、ふと目を上げました。
『おお、ユカちゃん、久しぶり!・・・ほらこっち座って、こっち!』
『やだ、Sさんのとなりは。・・・彼のとなりにしよっと。』
沙希と呼ばれたその女性は、さきほどの和服の美女でした。
となりに腰をかけたときなんともいえない甘い香りがして、僕は胸が高鳴るのを覚えました。聞いてみるとやはり沙希さんはこの店の常連客で本業はホステスだとのこと。ちかくで見るとあらためてその美しさに気圧される思いでした。ややメイクが濃いかんじではありましたが、ロイヤルミルクティーくらいのかすかに小麦色に日焼けした肌が白い和服に映えて、匂うような色香を発散していました。
『ねえ、きみ飲んでる?・・なにかほかのもの飲みたい?』
『あ・・・ハイ・・・飲んでます・・大丈夫です・・・』
Sさんがママを相手に会社の愚痴をこぼしながらくだを巻いているのをいいことに、僕は沙希さんを独り占めしていました。沙希さんと僕は偶然にも地元が一緒で、それがきっかけで急速に仲良くなりました。
郷里が一緒だということがよほど嬉しかったのか、沙希さんは時おり僕の膝に手を置いて、初対面とは思えないほど親しげに話してくれました。目元にほんのりと紅がさしているところを見ると、けっこう酔いがまわっているようでもありました。気がつくとからだが密着してきているのがわかり、僕は思わず下腹部が熱くなるのを抑えられませんでした。
『ねえ・・・さっき・・・わたしのこと見てたでしょう。』
『・・・え?・・・・』
まわりの喧騒をよそに、沙希さんが耳元で囁きました。
驚いた表情で見返すと、沙希さんはくすくすと笑いながら甘い息の香りが嗅げるほどちかくに顔をよせて甘えっぽくなじるのです。
『かわいい顔して・・・お姉さんを誘惑しようとしてんの?』
『・・・いや・・・そんな・・・』
『うふン・・・照れちゃって、超かわいいんだけど!』
はじめはからかわれているのかと思いましたが、どうもそうではないようでした。
『沙希は年下大好きだからねー、最近ご無沙汰だから、きみ、食べられちゃうよ』
ママが言うのを聞いてSさんが『おい、沙希!なにいちゃついてんだ!』と大声をあげましたが、沙希さんは野次を無視して指先で僕の顔をつつくのをやめませんでした。
『わたしオジサンだめなの。お店にくるのはオジサンばっかだし、若い子とか最近ぜんぜん縁がないからつまんないの・・・。』
キスができるほどの近い距離で甘えっぽく囁かれるたびに僕の下半身は正直に反応していました。まるで言葉で股間をもてあそばれているようでした。まさか自分みたいな小柄でハンサムでもない男が、こんな長身で美人のお姉さんに気に入られるなんて本当に信じられませんでした。
『わたし・・Eくんみたいな猿っぽい顔の子、超タイプなんだよね・・』
耳元で熱い吐息をふきかけられ、僕はゾクッと身をふるわせました。
『ねえ・・・、Eくん・・年上のお姉さんきらい?』
僕はまるで催眠術にかけられたように、首を横に振って否定しました。
『・・・じゃあさあ・・・ふたりで・・お店出ようよ・・・』
その言葉をきいたとき、僕は完全に勃起してしまいました。お姉さんに手をひかれるまま、酔い潰れたSさんを残して店を出ると、すぐにタクシーに乗り込みました。
タクシーは目黒あたりにある沙希さんのマンションに向かっていました。
タクシーのなかでも沙希さんは僕の手を握って時おり小悪魔っぽい微笑をうかべていました。とにかく夢ならさめないでほしい。心の中でそれだけを祈っていました。ペットボトルの冷たい水を飲んだおかげで、もともとそれほど飲んでいなかった僕は完全に酔いから覚めていました。
タクシーを降りて手をひかれながらエントランスを過ぎ、エレベーターに乗り込むなり沙希さんはしなだれかかるようにしてキスをもとめてきました。
『・・・はあンッ・・・うふンッ・・・!』
甘い息をふりまきながら大胆に舌をからめてくる熱っぽいキスに僕はもう脳髄がとろけるほど興奮しました。
エレベーターが10階で止まり扉がひらくと、そのまま駆けるようにして部屋のドアを開け、玄関口で靴も脱がずにお互いの舌を吸いあっていました。
『ああン・・・もう・・・だから和服ってきらい・・ねえ、手伝って・・』
促されるまま着物を脱ぐのを手伝いながら、僕はお姉さんの奴隷になったような倒錯した気分になっていました。帯を床に落として着物を脱ぎ捨て、最後の一枚をはだけると、黒いビキニパンティだけを残した小麦色の裸身がチラつくのが見え、沙希さんは僕の粘っこい視線に気づくと壁に背を預けながら小悪魔っぽい笑みを浮かべました。
僕はもう、たまらずお姉さんのからだにふるいついていきました。
『・・・はあああンッ!!』
沙希さんのからだにからみつくように両手で美尻を揉みたて首筋に吸いついていきました。
『・・・ああンッ・・いやンッ!』
甘いコロンの香りのなかにかすかに汗の匂いがして、たまらないオトナの女のフェロモンを発散していました。僕は熱にうかされたようにお姉さんのからだを壁に押さえつけてねっとりと舌をつかって汗ばんだ肌を味わっていきます。
『・・あッ・・あッ・・あッ・・・!』
僕の舌と指が蠢くたびに、沙希さんはゾクッゾクッとからだを反応させては悩ましく身をくねらせました。
そのとき、沙希さんのセカンドバッグから携帯の鳴り響く音がきこえました。
ちょっと待って、と沙希さんは僕の体を押し返してハンドバッグに駆け寄っていきます。急に冷や水を浴びせられたような気分になり、僕は電話の相手を怒鳴りつけてやりたいのと同時にほかに相手がいるのかと不安な気持ちになりました。
『・・ああ、Sさん?ごめんなさい、今夜はお先に失礼してしまって・・・』
沙希さんはちらりとこちらを振り向いて悪戯っぽく笑いかけました。
『Eくんもタクシーで帰ったんじゃないかな・・つながんない?・・じゃあ帰ったんだよ。』
僕は内心ほっとするのと同時に、長襦袢一枚の沙希さんの後姿を見ているうちに吸い寄せられるように背後から近付いていきました。
気づかれないように、そうっと長襦袢のなかにもぐりこんでいきます。
『・・・え?・・・今度デートですか?・・・・きゃああッ!』
お尻に鼻先をうずめていくと、沙希さんは腰を跳ね上げさせて悲鳴をあげました。
『・・ごめんなさい・・うちペットのワンちゃんがいて・・・あン、こらッ・・・!』
僕はもう我慢できませんでした。
振り向いた沙希さんの腰にすがりつくようにパンティの奥に鼻先をうずめていきます。あのなんともいえない甘酸っぱい濃厚な匂い。見上げると沙希さんも興奮してしまったらしく、僕の髪を撫でながら悩ましげに腰をくねらせて、携帯を耳にあてたままベッドルームに誘いました。
『・・・Sさんごめんなさい、今夜はけっこう疲れちゃってて・・・』
黒のTバックパンティだけを残した裸身を見せつけるようにしてベッドに腰かける沙希さん。パールピンクのペディキュアが塗られた爪先が誘うように揺れていました。
『・・だからごめんなさい、そろそろ・・・いやあああンッ!』
足の指のあいだに鼻先をうずめていくと沙希さんは携帯を取り落として悲鳴を上げました。
和服の足袋のなかでムレムレになった汗の匂いと、沙希さんの甘い悲鳴で僕は情けないことにパンツのなかでかるく射精してしまいした。それでも身をくねらせて逃げようとする沙希さんを横目で眺めながらしつこく沙希さんの両足の指を舐めては吸いたてました。Sさんが電話の向こうでどこまで聞いていたのかは知りませんが、後日会社で問いただされたのは言うまでもありません。
僕はタコのように沙希さんの汗ばんだ肌に吸いついて離れませんでした。
『・・・うッ・・はああン・・Eくん・・舐めかた・・すごいエッチ・・・・』
いちど射精してしまったのがかえってよかったのか、僕は舐めたくてたまらなかった沙希さんのからだのすみずみをじっくりと舌で味わっていきました。沙希さんはとにかく舐められるのが大好きらしく、腋の下や足の指のあいだなど汗をかきやすいところが特にたまらないようでした。
『・・・すごいの・・・こんなに舐められたことない・・もうだめ・・もう・・』
パンティを丸め取られるころになると、沙希さんは腰をくねらせながら僕の舌が待ちきれないようでした。沙希さんのあそこはパイパンで、甘酸っぱい濃厚な匂いがしてすでに濡れきっていました。僕は熱にうかされたようになりながら涎をたらして太股の奥に吸いついていきました。
『・・・はああああンッ!!』
沙希さんの口から、たまらない悲鳴がきこえました。
『・・・ねえEくん・・今日からわたしのものになりなさい・・・わかった?・・』
濃厚な蜜の匂いでビンビンになったものを指でもてあそばれながら、僕は犬のようにこくんこくんと頷くばかりでした。
『・・・足の匂いで興奮して出しちゃうなんて・・ほんとにヘンタイね・・・』
キスができるほどに顔を寄せて、甘い息の匂いをふりまきながら囁く沙希さん。お姉さんにヘンタイ呼ばわりされることで、よけいに興奮してしまいます。
『・・・でもすごい・・こんなにビンビンになって・・・そりかえってんじゃん・・・
・・・ああン、もう・・・ねえEくん・・うしろからきて・・・』
僕はまるで催眠術にかかったように、沙希さんのからだにうしろから抱きついていきました。先端が粘膜にこすれるたびに僕と沙希さんはお互いに声がもれるのをとめられませんでした。
結局それから明け方ちかくまで、僕は沙希さんを悦ばせました。
たまたま趣味でボクシングをしていたせいで、勃起力とスタミナはわりとあるほうでしたが、沙希さんが相手だと何度でも勃起してしまうみたいでした。
『・・もうだめ・・もう死んじゃう・・狂っちゃう・・』
言いながら子宮をキュッキュッとしめつけて、いやらしく尻をふりたてて喘ぐ沙希さんの色香はほんとうにたまりませんでした。
沙希さんも、僕の舐めフェチ、匂いフェチの変態っぽい性癖と、セックスの精力に完全に発情してしまったようでした。2時間ちかく延々とあそこを舐めまくっておしっこが洩れそうになったときがあり、そのときはバスルームであそこに吸いついたまま沙希さんのおしっこを飲みました。あの時の沙希さんの興奮ぶりはほんとうにすごくて、そのあと沙希さんのなかに思いっきり射精してしまいました。
『・・・Eくん・・好き・・だいすきなの・・・セックスたまんないの・・・』
銀座のホステスにベッドで甘えっぽく愛を囁かれるのはたまらない優越感でした。このからだを独占するために何人ものオヤジたちが金をつぎ込んでいるのだと思うと自然に笑いがこみ上げてくるのを抑えられませんでした。
沙希さんとは2年近く関係を続けました。
沙希さんが30歳になるころに、結婚の話と僕の浮気が原因で別れることになりましたが、嫌な別れかたではありませんでした。
『もうあんなにセックスすることはないかなあ・・・』
と寂しげに呟く沙希さんに『こんな美人誰もほっとかないよ』と告げたときの彼女の笑顔が今でも忘れられません。
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